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岡山地方裁判所 平成6年(ワ)608号 判決

岡山県〈以下省略〉

原告

右訴訟代理人弁護士

加瀬野忠吉

東京都中央区〈以下省略〉

被告

日栄証券株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

佐藤博史

飛田秀成

主文

一  被告は原告に対し、金八六万七一五〇円及びこれに対する平成五年一二月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その三を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は原告に対し、金一二二万四五〇〇円及びこれに対する平成三年七月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、原告が、証券会社である被告の従業員の勧誘により外貨建ワラントを購入したところ、価格が非常に下がったため売却できず、権利行使期限を経過して無価値となったとして、適合性原則違反、断定的判断の提供、説明義務違反等を主張して、被告に対し債務不履行又は不法行為(民法七〇九条、七一五条)に基づく損害賠償の請求をした事案である。

二  争いのない事実

1  原告は、昭和一四年生まれの女性である。

被告は、証券業を営む株式会社である。

2  平成三年六月中旬頃、被告橿原支店の従業員B(以下「B」という。)が原告に対しワラントの購入を勧めたので、原告はBの勧誘する商品を購入することにした。

3  原告は、平成三年六月二五日頃、日栄不動産のワラント一〇〇ワラント(以下「本件ワラント」という。)を代金一一二万四五〇〇円で、トーメンのワラント五〇ワラントを代金六〇万五五〇〇円で購入し、同年七月二日右購入代金一七三万円を支払った。

4  本件ワラントの価格は、平成四年四月終わり頃には値下がり傾向にあったが、その後売却しないまま権利行使期限である平成五年一二月七日を経過し、無価値となった。

三  争点

本件取引における違法性ないし債務不履行の存否

(原告主張の違法事由)

1 本件ワラントの危険性

本件ワラントは、一般論として指摘されるところのワラントの危険性と比較して、著しく切迫した危険性を有していた。すなわち、まず、本件ワラントの権利行使価格は一八八一・七〇円であったのに対し、原告が本件ワラントを購入した平成三年六月当時の株価は七五〇円前後となっていた。端的にいえば、本件ワラントは、購入当時七五〇円の株を一八八一・七〇円で買う権利であったのであり、株価が一一三一・七〇円(購入当時の株価の約一五〇パーセント)上昇しない限り理論的には必ず無価値になる商品であった。しかも、ワラントの権利行使時の損益を考えるには、ワラントの購入コストも計算に含める必要があり、これを考慮に入れると、本件ワラントは、株価が一一六〇・九五円(購入当時の株価の約一五五パーセント)を上回る上昇を見せなければ、理論的には(あるいは転売せず保持し続ければ)利益を生じることがあり得ない商品であった。また、本件ワラントは、購入当時既に権利行使期間のうち一年半を経過しており、残存期間は約二年六月であったが、実質的には最後の一年は値付けがなされず、転売が不可能となるため、転売が可能な期間はわずか一年半であった。このようなワラントにおいては、もはや株価との連動性は失われている。本件ワラントのごとく株価が権利行使価格を大きく下回り、権利行使期限が切迫しているワラントにおいては、購入後、株価が購入時の水準を維持しても、行使期限のさらなる切迫により、期限までに株価が権利行使価格を上回ることへの期待値であるプレミアムは急激に減少し、ワラントの価格は急激に減少していくことになる。本件ワラントは、株価が極端な上昇を見せない限り、確実に価格が下落し、権利行使期限の到来を待たずして無価値へと近づいていく特質を有していたのである。本件においては、まさに右のような特質が現実化している。すなわち、平成三年六月二五日の本件ワラントの購入後、同年一一月頃までは株価はむしろ上昇したにもかかわらず、本件ワラントの価格は購入時の価格より高くなったことは一度もなく、その後は、株価が下落するに従って、本件ワラントの価格は急激に下落の一途をたどったのである。

2 本件の事実関係

(一) 原告について

原告は、昭和五六年頃から奈良県で喫茶店を始め、平成元年頃からは美容院の経営を始めたが、いずれも、もともとは生活のために始めたもので、経営規模も大きくなく、本件ワラント取引を行った平成三年六月頃には赤字で店舗を閉店する直前であった。また、原告は、昭和六二年頃から体調が悪く、大学病院等で検査を受けていたが、その後、平成五年頃には全身性エリテマトーデス等の難病の指定を受けている。原告は、昭和五六年頃から、被告の営業員に勧められて、初めて証券取引を行うようになった。その取引のほとんどは現物株式と投資信託の取引であり、ほとんどは被告の営業員から具体的な銘柄を勧誘されて取引をしたものである。原告は、現物株式の値段の動きは新聞等を見て把握していたものの、投資信託や転換社債等の商品内容、商品特性については全く知識を有しておらず、証券取引について特に詳しい知識を有していなかった。また、原告は、本件ワラント取引以外には、被告や他の証券会社との間で、信用取引等のある程度危険性があるとされる取引を行ったことは全くなく、商品先物取引等も行ったことはない。原告は、その証券取引の回数、金額、数量及び取引内容からみても明らかなとおり、一般の個人投資家であり、証券取引についての知識、経験をそれほど持っていなかった。したがって、原告には、本件ワラント取引のような投機的な証券取引をしようという意図は全くなかった。

(二) 本件ワラント取引の経緯

原告は、平成三年六月頃、被告の営業員であるBから、以前購入していた投資信託に損が生じていることを聞かされ、その損を取り戻すために、ワラントや店頭登録銘柄に乗り換えることを勧められた。その後、原告は、Bらから、ワラントが有望であり、三か月あれば投資信託の損を取り戻せるなどと何度も勧誘されたので、Bの言葉を信用し、ワラントを購入することにした。原告が、本件ワラントを購入する際、Bからワラントという商品名は聞いていたものの、ワラントの具体的な説明を一切受けていない。Bは、原告が本件ワラントを注文した平成三年六月二五日に、「国内新株引受権証券及び外国新株引受権証券の取引に関する確認書」(乙四)及び「外国証券取引口座設定約諾書」(乙二)の徴求を行うために原告方を訪れたが、帰り際にパンフレット等を置いていっただけで、原告に対し、ワラントについての具体的な説明を一切していない。

3 適合性原則違反

適合性原則とは、投資勧誘に際して、投資者の投資目的、財産状態及び投資経験等にかんがみて不適合な証券取引を勧誘してはならないという法則であり、証券会社が顧客の利益を軽視して過当な勧誘を行うことを防止するために要求される原則である。適合性原則は、大蔵省証券局長の通達や日本証券業協会の規則で規定されていたが、平成四年の証券取引法の改正により、法律で明確に規定された(同法五四条一項)。外貨建ワラント取引は、強度の投機性と複雑な仕組みや問題点を有する取引であり、少なくとも一般投資家が適合性を有しないことは明白である。外貨建ワラント取引について適合性が肯定されるためには、当該投資家が、外貨建ワラントの複雑な取引の仕組みや危険性、問題点を十分に理解した上で、的確に情報を入手して複雑な値動きの分析、予測を自らなし得るだけの知識と、経験、能力を有していること、全損のおそれを含む激しい値動きに耐え得る資金力とこれを前提にした投機的取引への指向を有しており、かつ、購入のための資金が全損の覚悟をなし得る性質のものに限定されていることが最低限必要である。原告は、資産の安定的な運用を望む平均的な一般投資家であり、右のような意味でワラント取引に適合するような顧客でないことは明かである。それにもかかわらず、被告は、本件ワラントを原告に勧誘しており、適合性原則に違反する。

4 断定的判断の提供

証券取引法五〇条一項一号は、証券取引一般に関して、証券会社又はその役員若しくは使用人が、価格が騰貴し又は下落することの断定的判断を提供して勧誘することを禁止している。また、公正慣習規則第八号「証券従業員に関する規則」においても、禁止行為として、断定的判断を提供しての勧誘が挙げられている(九条三項一号)。断定的判断の提供による勧誘が禁止されるのは、顧客に比して隔絶した専門的知識と豊富な情報網を有する証券会社が断定的な判断を提供して顧客を特定銘柄の取引に勧誘するときは、顧客は、それを理由付ける相当な根拠があるものとして、それを信頼して取引に入り、不当な損害を被るおそれがあるからである。そして、このような断定的判断の提供による取引は、もはや顧客自身の判断による取引ではあり得ず、この場合には自己責任原則の適用はなく、証券会社又はその使用人の勧誘行為は違法なものと評価される。被告従業員のBは、本件ワラント取引の開始に際し、「投資信託の損は三か月あったら取り戻してあげます。絶対に保証します。」などと、本件ワラント取引により原告に利益が発生するとの断定的判断を提供して、ワラントの危険性など全く知らない原告をして取引に入らせ、損害を与えたものであるから、被告の勧誘行為には重大な違法がある。

5 説明義務違反

証券取引の専門家としての証券会社は、一般投資家に対し、商品内容が複雑で、高度の専門的知識を必要とし、かつリスクの高い取引を勧誘する際には、顧客が自らの責任において取引を可能にする程度の説明をする法的義務、すなわち、当該商品の内容、取引の仕組み及びその危険性等について十分な説明をする法的義務がある。右の説明義務は、証券会社の誠実・公平義務(証券取引法四九条の二)あるいは信義則から導かれるものである。ワラントは、商品構造が複雑で、極めて危険性が高く、しかも周知性がない金融商品である。さらに、原告は、被告の従業員からワラントの勧誘を受けて購入させられるに至ったものであるが、勧誘されるまでワラント取引の経験も知識も全くなかったものであり、少なくともこのような場合に、ワラントを勧誘するについて説明義務が法的な意味で存在することは明らかである。ワラントは、商品構造が複雑で危険性が高く、しかも周知性がない金融商品である。したがって、ワラントを勧誘する際の説明は、一般投資家が通常行っている取引との相違点を明確にした上で、自己の責任における自主的投資判断をなし得る程度の内容を有していなければならない。すなわち、単にハイリスク・ハイリターンであることや権利行使期限の存在を抽象的に告げるのみでは、到底説明義務を果たしたことにはならないのであり、ワラント取引における説明義務の内容は、商品の構造・取引の仕組み・価格に関する情報・危険性の程度及び内容等全般に及ぶ必要がある。原告は、本件ワラント取引の開始に際して、被告の従業員から右のようなワラントの商品内容、取引の仕組みとその危険性について全く説明を受けていない。したがって、被告には説明義務違反の重大な違法性がある。

6 取引態様の明示義務違反

証券会社は、顧客から有価証券の取引に関する注文を受けたときは、予めその者に対し、自己がその相手方となって売買を成立させるか、それとも媒介、取次又は代理によってその売買を成立させるかを顧客に明らかにしなければならない(証券取引法四六条)。証券会社が売買の相手方となる取引においては、証券会社は、売買において顧客と対立する立場に立ち、その収益は顧客が支出又は受領する価格に直接影響される。これに対して、証券会社が媒介、代理又は取次によって売買をさせるときは、証券会社の利益はその売買について顧客と対立することなく、その収益は手数料収入として算定される。したがって、注文の取引が証券会社の自己売買として執行されるか、その委託売買によって執行されるかは、証券会社に注文を出す顧客の利益に重大な影響を及ぼす。そこで、証券会社は、顧客から有価証券の取引に関する注文を受けたときは、それを受託する前に、その取引を成立させる態様を明示する義務を負うものとされている。本件ワラント取引においては、原告と被告とは、売買の相手方として利益が相反する関係にある。しかし、被告は、自らが売買の相手方となるにもかかわらず、その点を原告に全く明らかにせず、あたかも通常の上場取引であるかのごとく装って、原告に本件ワラント取引を行わせており、証券取引法四六条に違反する。

7 一般的に言って、証券会社と一般個人投資家の隔絶した力関係の差と信頼関係の下では、証券会社は、自ら勧誘を行って、当該投資家が十分な投資判断、特に売却時期の判断を行い得ない状況で購入させた証券については、事後の情報提供義務、助言義務を負うべきものと解すべきところ、顧客の理解が困難で、価格情報も不十分であり、しかも放置すれば最後には全損に至る外貨建ワラント取引においては、これらは極めて重要な意義を有する。

本件ワラント取引においては、原告が本件ワラントを購入した後においても、せめて正しい価格情報と右ワラントの危険性が告知され、特に、本件ワラントの価格が購入後は一度も購入時の価格を超えず、ずっと値下がりを続け、しかも急激に値下がりしていたものであるから、その際に、被告から早期の売却の必要性があることが助言されていたならば、原告の損害は一定程度にくい止められたと考えられる。しかし、Bは、原告に対し、そのような適切なアドバイスをすることを怠ったまま放置したために、原告は、本件ワラント購入代金全額の損害を被ることになったものであり、これ自体が他の違法要素と相まって、強度の違法性を生じさせている。

8 被告の責任

(一) 不法行為責任

被告及びその従業員は、以上のように証券取引法その他の関係法令に違反して、原告に損害を及ぼしたものであり、その一連の行為は、社会的相当性を逸脱する違法な行為として、不法行為を構成する。

(二) 債務不履行責任

証券取引をめぐり、証券会社と一般投資家との間には、証券の取次の委託ないし売買という契約関係が発生する。そして、証券取引に関する専門的知識・情報におけるギャップの大きさから、専門家である証券会社には、顧客との間の取引の過程において、顧客に不当な損害を被らせないようにする高度の注意義務が認められる。また、近時の証券取引法の改正により、証券会社及びその使用人等は、顧客に対し、単なる善管注意義務にとどまらず、より高度の誠実義務を負うものとされ(同法四九条の二)、証券会社が一般投資家に対して高度の注意義務を負うことが明確にされた。右証券会社の注意義務を具体的に述べれば、証券会社は、本件ワラントのような危険な商品を顧客に販売するに当たっては、顧客が予期しない不当な損害を被ることのないように、その商品の危険性等について十分説明しなければならない。本件ワラント取引においては、被告は、極めて危険性の大きいワラントの勧誘に当たり、原告に対し、その商品の内容、取引の仕組み及び取引の危険性等について全く説明を行わず、原告に対し、不当な損害を与えたものであるから、証券取引という契約関係にある当事者間の注意義務違反に基づき損害を賠償する義務がある。

(被告の主張)

1 原告について

原告は、平成三年六月当時、近鉄八木駅前で喫茶店を経営するほか、近鉄橿原神宮駅付近で美容室を経営していた。原告と被告の取引は、昭和五六年五月から平成六年三月まで行われているが、それまでの株式及び投資信託の売買実績をみると、①株式の売買回数一七七回、株数約三八万株、売買益二六〇〇万円強(売買損六〇〇〇円)、②投資信託の売買回数三九回、売買口数一万二一二四口、売買損益マイナス二五八万円(差引額)となっている。このように、原告は、投資経験も長く、大口投資家であり、かつ、証券知識も豊富であった。

2 本件ワラント取引の経緯及びその後の経過

平成二年九月にBが前任者から担当を引き継いだ時点において、原告が保有していた投資信託は、値下がりして七〇〇万円程度の評価損を出していたので、原告は、右評価損の修復を強く望んでいた。そこで、Bは、右評価損の修復のため有望と思われる店頭登録株式やワラントを紹介した。特に、当時市況が明るかったことから、Bは、ワラントが適当と考え、原告にワラント取引を勧めた。

平成三年六月一〇日、原告は、投資信託の売却を約定し、また、同日、エム・アイ・シー株式一〇〇〇株の買付を行った。同年六月一四日に右売買代金精算と預り証の交換を行うために原告宅を訪問したBは、国内ワラント及び外貨建ワラント取引説明書等の資料を持参してワラント取引について説明を行った。その内容は、ワラントとはどのようなものか、ワラント取引のメリットは何か、権利行使期間を経過すると無価値となり、また、為替のリスク等もあるハイリスク・ハイリターンの商品であることを、計算例を示して詳細に説明した。原告は、Bの商品説明に対し、「リスクはあるが、投資信託の含み損を回復させるには、株式よりも良いのではないか。」と述べて大変興味を示した。

そこで、Bは、同年六月二五日原告に電話をして、トーメンワラント及び日栄不動産ワラントの二銘柄を紹介し勧めたところ、原告からトーメンワラント五〇ワラント、日栄不動産ワラント一〇〇ワラント(本件ワラント)の買付注文を受けた。同日、Bは原告から、「外国証券取引口座設定約定書」及び「国内新株引受権証券及び外国新株引受権証券の取引に関する確認書」に署名押印してもらった。同年六月二七日、Bは、原告に対しトーメンワラント五〇ワラント及び本件ワラント一〇〇ワラントの預り証二通を交付した。なお、原告は、エム・アイ・シー株式一〇〇〇株を売却してワラントの買付代金に充当した。この精算についても、Bは、原告に対し詳しく説明している。ちなみに、原告は、平成三年九月二六日にトーメンワラント五〇ワラントを売却して利益を得た。

当初、トーメンは約三か月で利益が出たものの、本件ワラントは、原告が期待したほど相場が上昇せず、利益を出すには至らず、その後相場環境はさらに下降線をたどっていった。Bは、トーメンワラント及び本件ワラント買付後、週に一度程度電話で連絡したり、原告方を訪問して、ワラントの値段と時価評価額等を報告していた。原告も説明に納得し、株式の売買等を継続するなど、円滑な取引関係が維持された。また、被告は、平成三年八月以降「ワラント証券時価評価のお知らせ」を毎月原告に送付していた。したがって、原告が平成四年四月終わり頃になってワラントの価格の値下がりを初めて知ったということはあり得ない。

平成四年四月六日原告が被告橿原支店に来店した際、C支店長及び担当者Bは、その時点でのワラントの値段、時価評価額及び権利行使期限(平成五年一二月七日)を過ぎると無価値となることを説明して、本件ワラントの売却を提案したが、原告は、右説明に理解を示したものの、「少しでも高い値段で売却してほしい。」「ワラントの値段が今の値段より上がることがあれば連絡してほしい。」と述べて、しばらく様子をみた後売却する意向を示した。その後、本件ワラントは値上がりせず、被告は原告から本件ワラント売却の注文を受けるに至らなかった。平成四年一一月、C橿原支店長が大阪支店へ転任するに際し、C及びBは、原告と面談してワラント買付当時の取引状況やワラントの現況等を説明し、原告はこれを納得した。その後、平成五年二月にBは、大阪支店に転勤を命じられ、後任担当者に原告口座の引継を行ったが、原告は、これに対し何らの異議も述べず、その後も後任担当者との間で円滑に取引を行っていた。

平成五年一〇月一三日、原告から被告に対し、本件ワラントに関して話し合いの申入れがあり、原告方で話し合いが行われた。原告は、「ワラントの購入は、投信の損を取り戻すことで勧められたのに、今の状態は納得できない。損失を何とかしてほしい。」と主張した。被告は、損失補填という形はとれないこと、権利行使期限を過ぎると無価値となることを再度伝え、売却を勧めたが、原告は納得せず、本件ワラントを処分しなかったため、行使期限を徒過し、本件ワラントは無価値となった結果、その代金相当額の一一二万四五〇〇円の差損が生じた。

3 以上のとおり、被告担当者のBは、ワラントの商品内容、性質、取引方法及び危険性等を詳しく説明しており、被告に説明義務違反はなく、原告のその他の違法事由の主張も理由がない。

第三争点に対する判断

一  本件の事実関係について

前記争いのない事実と証拠(甲一二〇ないし一二三、一三二、乙一ないし七、証人B、原告本人、弁論の全趣旨)を総合すれば、次の事実を認めることができる。

1  原告(昭和一四年生まれ)は、離婚後、郷里の鹿児島県から奈良県に移住し、昭和五六年頃から同県橿原市で喫茶店を経営するようになり、さらに平成元年頃から美容院の経営も始めた。一時は、近鉄八木駅前の喫茶店の経営が順調にいって、従業員を八人雇っていた時期もあったが、その後経営状態が悪化し、平成三年八月で喫茶店を閉めた。また、美容院の方は初めから赤字経営で、当初は四、五人いた従業員も平成三年六月頃には美容師見習い一名のみになり、原告の体調が悪くなったこともあって、平成三年七月頃に閉めた。原告は、以前から体調が悪い状態が続いていたが、平成五年には難病の全身性エリテマトーデスその他の病気の診断を受けた。また、原告は、平成三年一二月に気候の良い土地を求めて、リウマチの持病のある娘と共に岡山県山陽町に移住した。

2  原告は、昭和五六年頃から被告と取引を始めるようになり、以後取引を継続して多数回行ったが、他の証券会社との取引はない。原告は、主として喫茶店の収益の中から投資し、自分でも新聞で株の価格変動を見て売り買いした場合もあったが、大部分は、被告の担当者の勧めに従っていた。原告の株式投資は、購入した株式を比較的短期間保有していて、新聞で株価を見ていて少し上がれば売却し、株価が下がれば購入するといったやり方が主であり、格別に株式投資等について専門知識が豊富であったわけではない。取引の対象は、株式、株式投資信託、転換社債等であったが、株式と株式投資信託が中心であり、一回の注文量は二〇〇〇株から三〇〇〇株で、預かり資産も四〇〇〇万円あり、被告橿原支店の顧客の中では大口投資家であった。原告と被告の取引は、本件ワラント購入後も、平成六年三月まで続いた(最後の株式購入は平成五年一二月)が、昭和五六年からの全部の取引実績は、株式の売買回数一七七回、株数約三八万株、売買益二六〇〇万円余、投資信託の売買回数三九回、売買口数一万二一二四口、売買損益マイナス二五八万円となっている。

3  Bは、平成元年四月から平成五年二月まで被告橿原支店に勤務し、平成二年九月頃に前任者から引き継いで原告の担当となった。Bは、原告と同郷ということもあって、原告に気にいられた。当時、原告は、投資信託による評価損が七〇〇万円程度出ていた。そこで、Bは、そのことを原告に説明したところ、原告は、何とか早く取り戻してほしいと希望したので、Bは、店頭登録株式やワラントというような商品があることを紹介した。原告は、それまでワラント取引をしたことはなく、ワラントについての知識もなかった。

4  平成三年六月一〇日頃、Bは、原告方に株式売却代金を持参した際に、当日の日経新聞のほか、社団法人日本証券業協会発行の「国内新株引受権証券(国内ワラント)取引説明書」(乙七)と社団法人証券広報センター発行の「わかりやすい転換社債とワラント債」(乙八)という小冊子のコピーを使用し、ワラントの内容を説明し、右説明書を渡した。Bが原告に説明した内容は、Bの記憶によれば、ワラントの正式名称は新株引受権証券ということ、ワラントには国内ワラントと外貨建ワラントがあること、ワラントはある一定の価格(行使価格)で新株を引き受けることができる権利の売買であること、ワラント銘柄の株価が権利行使価格を上回った時は新たな資金で新株の取得ができ、その新株の売買によりキャピタルゲインの期待が実現するというメリットがあること、一方で、権利行使は期限付きであるため期限を経過すると無価値になるというデメリットがあること、株式と比べ好悪材料により価格の変動が大きく、外貨建ワラントは為替リスクも有する等、ハイリスク・ハイリターンの商品であることなどである。また、Bは、現時点では、権利行使価格とワラント銘柄の時価の株価とがかけ離れているので、権利行使により新株を引き受ける人は少なく、むしろプレミアム売買が主流となっていること、プレミアム売買は投資額が少額で小数点以下のポイント(価格)変動で利益が得られるうま味があることも話した。しかし、原告は、ワラントについての予備知識が全くなく、Bのひととおりの説明で複雑な外貨建ワラントの仕組みを理解できたとはいえず、むしろ、投資信託の評価損を何とかしたいという思いが強く、Bの巧みな説明から、ワラントは短期間で利益を得られる可能性のあるうま味のある商品であると認識し、関心もその点に集中した。そして、原告は、Bが原告にワラントの説明をして勧誘する中で、「私に三か月任せてください。」という趣旨の発言をしたことで、三か月で必ず利益を上げて損を取り戻せる商品であるような理解をし、場合によっては無価値となることもあり得る商品であることは理解できなかった。そこで、原告は、Bに、いい銘柄があれば紹介してほしいと頼んだ。原告は、Bが持参して置いていった前記説明書は、内容が難しそうであったので、中身をよく読まないまま放置した。

5  同年六月二五日、Bは、本件ワラントとトーメンワラントの購入を電話で原告に勧めた。本件ワラントの権利行使期間の残存年数は二年五か月、トーメンワラントのそれは二年六か月であった。Bは、右行使期間の残存期間が比較的長く、ワラントの出来高も伴っており、両銘柄の株価も底値にきていると判断していた。平成三年六月二七日時点での日栄不動産の株価は七五〇円であり、権利行使価格は一八八一・七〇円であるから、相当に開きがあり、本件ワラントは、客観的には相当危険性のある商品であるといわざるを得ないものであったが、原告がこの点についてBから十分説明を受け、理解していたとはいえない。Bの思惑では、株価の急激な上昇もあり得るから、本件ワラントのような低価格のものは価格の変動が激しいので、うまくいけば短期間で利益を上げることも可能であると考えていた。そして、原告が右二銘柄の買付を承諾したので、同年六月二五日、Bは、「国内新株引受権証券及び外国新株引受権証券の取引に関する確認書」(乙四)及び「外国証券取引口座設定約諾書」(乙二)に署名捺印してもらった。前者の確認書には「私は、貴社から受領した「国内新株引受権証券取引説明書」及び「外国新株引受権証券取引説明書」の内容を確認し、私の判断と責任において下記の取引を行います。」との記載がある。同日、Bは、右買い注文を受けた本件ワラント及びトーメンワラントの約定成立後、その旨及び金額等を原告に連絡した。同年六月二七日、Bは原告に対し、本件ワラント及びトーメンワラントの預り証を交付した。また、右の買付代金は、同年六月二六日に売却した日本エム・アイ・シー株式一〇〇〇株の売却代金を充当した。

6  その後、Bは、電話連絡のほか、時折原告方を訪問し、ワラントの値段、時価評価額等を原告に報告し、また、Bと橿原支店のC支店長が原告方を三、四回訪問した際にも、これらのことや、権利行使期限を過ぎると無価値になることを説明した。さらに、被告は、平成三年九月以降は、毎月末価格による「海外新株引受権証券(ワラント証券)時価評価のお知らせ」を毎月顧客に送付していた。平成四年四月六日には、被告橿原支店でC支店長とBが原告と面談したが、その際にも、本件ワラントの値段、時価評価額、行使期限(平成五年一二月七日)を過ぎると無価値になることを改めて説明した。しかし、原告は、その時点でもワラントの仕組みや危険性等を十分に理解していたとはいえず、「少しでも高い値段で売却してほしい。」等と発言したにとどまった。その後も、原告は、被告との間で株式投資等の取引を継続していった。なお、その間、平成三年九月二六日にはトーメンワラントの価格が上昇し利益が出ていたので、Bが電話でその旨を原告に伝え、原告からの売却注文により売却し、原告は利益を得た。

以上の事実が認められる。原告本人尋問の結果中には、Bから、本件ワラントの購入を勧められた際に、投資信託で出ていた損を「三か月で絶対に取り戻せる。」と言われたので、右のBの言葉を信用して本件ワラントの購入を決意したこと、及び、Bからワラントについての説明は一切受けていない旨の供述部分があるが、右供述部分は、前掲乙五号証及び証人Bの証言と対比してにわかに採用できない。しかし、Bと原告との会話の中で、Bが「私に三か月任せて下さい。」といった内容の言葉を述べたことは、前掲証拠により認定することができる。他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

二  原告主張の違法事由に対する判断

1  ワラントは、新株引受権付社債(ワラント債)の社債部分から切り離され、それ自体で独自に取引の対象とされている新株引受権ないしこれを表章する証券のことであり、ワラントの保有者は、ワラント債発行時に決められる一定の期間(権利行使期間)内に一定の価格(権利行使価格)で一定数量の新株を引き受ける(買い取る)ことができる。ワラントは、権利行使期間を過ぎると無価値となり、また、価格変動が一般に株式より大きく、不安定である。外貨建ワラントは為替変動の影響も受ける。このように、ワラントは、ハイリスク・ハイリターンの商品であり、かつ、一般投資家にはなじみが薄く、その仕組みが複雑で、経験も予備知識もない一般投資家にとっては、ワラントについて概略の説明を受けた程度では、その仕組みや危険性を容易に理解できるものではない。

さらに、本件ワラントは、前記のとおり、権利行使価格は一八八一・七〇円であったのに対し、原告が本件ワラントを購入した平成三年六月当時の日栄不動産の株価は七五〇円程度であり、権利行使期間は平成五年一二月七日までで、残存期間は約二年五月であるが、その間に株価が一一三一・七〇円(コストを考慮に入れないでも)上昇しない限りは、理論的には無価値となる商品であったものであるから、購入後の株価の上昇によりワラント価格の上昇に期待することもできる反面、現実にたどった経過に見られるとおり、売却して利益を上げることができず、最終的には無価値となる危険性も非常に大きい、投機性の高い商品であったものということができる。

2  ところで、証券取引は、経済情勢、政治情勢等多くの不確定な要素に基づく相場の変動に起因する危険を本来伴うものであって、証券取引に入ろうとするものが相場の下落による損失を負担するのは当然であり、投資者としては、対象証券の内容、特性等必要な事項について十分理解した上で、自らの判断と責任において、当該取引の危険性及び自己がその危険に耐えるだけの相当の財産的基礎を有するかどうかを判断して取引を行うべきであり(自己責任の原則)、このことは、本件のようなワラント取引についても妥当する。

しかし、他方、証券会社は、相場を左右する諸要因を始めとして、証券発行会社の業績、財務状況等についての高度の専門的知識や情報、及びこれらを総合して相場を予測する能力と経験を保持している。これに対し、多くの一般投資家にとっては、必ずしもこれらの知識、情報、能力及び経験等の取得は容易でなく、証券市場に参入しようとする多数の一般投資家は、証券会社から得る情報等を信頼して取引の判断をせざるを得ない。このような状況において、専門家としての証券会社又はその使用人には、投資者の年齢、職業、財産状態、投資目的、投資経験等に照らして、当該投資者にとって、明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘したり、投資者が投資するか否かを判断するための重要な要素である当該取引に伴う危険性について、正しく認識するに足りる情報を提供しなかったり、虚偽の情報や断定的情報を提供して、取引に伴う危険性についての顧客の認識を誤らせるなど、投資者の自由な判断と責任において決定することができないような、社会的に相当性を欠く手段又は方法によって投資を勧誘することを回避すべき法的な注意義務があるというべきである。そして、右勧誘時の注意義務違反の有無等は、当該取引の一般的な危険性の程度、その周知度、顧客の投資経験、知識、職業、年齢、財産状態、投資目的、当該取引が行われた際の具体的状況等に照らして判断されるべきであり、原告主張の証券取引法や規則の規定は、証券会社に対する公法上の取締法規あるいは証券会社の自主的ルールであるから、右判断に当たって考慮すべき要素の一つをなすにすぎず、これらの規定に違反したからといって、ただちに私法上も違法と評価されるわけではない。そこで、以下、原告主張の違法事由について、検討する。

3  適合性原則違反の主張について

前記認定事実によれば、原告は、本件ワラントを購入した平成三年六月当時は、既に約一〇年間の株式や投資信託等の取引経験を有し、その間、多数回かつ多額の投資を行ってきたもので、被告橿原支店の顧客の中では大口の顧客であったもので、それなりに投資経験は豊かであったといえる。また、平成三年七、八月に奈良県橿原市で経営していた美容院や喫茶店を閉めたとはいえ、それまでこれらを経営し、相当の収益を上げてきたものと推認され、本件ワラント及び同時に購入したトーメンワラントの買付代金は株式売却を充当しており、本件ワラントの購入金額程度の投資が原告の財産状態からみて過大な危険性を伴うものであったとまではいえない。しかしながら、原告は、あくまで、資産の安定的な運用を望む一般投資家であり、投機的取引への指向を有していたとはいえず、また、格別証券取引についての知識が豊富であったわけではなく、ワラントについての経験も知識も本件ワラント購入をBから勧誘されるまでは皆無であったものである。さらに、本件ワラントは、前記のとおり権利行使価格と購入時の株価との開きが非常に大きく、極めて危険性の大きい、投機性の高い商品であった。原告が外貨建ワラントの取引の仕組みや危険性等を十分理解し、かつ本件ワラントの内容、危険性を把握できる能力があったことは疑わしく、適合性の原則の点からいって、極めて問題であったといわざるを得ない。

4  断定的判断の提供の主張について

原告は、Bが原告に対し、「投資信託の損は三か月あったら取り戻してあげます。絶対に保証します。」などと述べて、本件ワラント取引により原告に利益が発生するとの断定的判断を提供した旨主張するが、Bが原告に対し右のような発言をした事実までは認定できないことは前記のとおりであるから、原告の右主張は採用できない。

5  説明義務違反の主張について

前記のとおり、外貨建ワラントは、取引の仕組みが非常に複雑で、一定期間経過後は無価値となり、価格の変動も不安定で、ハイリスク・ハイリターンの商品であり、特に本件ワラントは危険性の大きなものであったのであるから、被告の従業員が原告に対し本件ワラントの勧誘をするに当たっては、ワラントの意義、権利行使期間や権利行使価格の意味、外貨建ワラントの仕組みと危険性、外貨建ワラントが場合によっては無価値となることもあるハイリスクの商品であること、本件ワラントが当時権利行使価格と株価の差が大きく、相当危険性もある商品であるなどを十分理解させるように説明する義務があったものというべきである。

しかるに、前記認定事実によれば、Bが原告に対し本件ワラントの購入を勧めるに当たって、説明書を持参し、ワラントの性質や危険性等についてひととおりの説明をしたことは肯定できるが、ワラントについての知識、経験は皆無で、特に複雑で危険性の大きい外貨建ワラントの仕組みや危険性について十分な理解力を有していたともみられない原告に対し、相当危険性の大きかった本件ワラントについて、その危険性を認識させるだけの十分な説明をBがしたとはいい難い。かえって、原告は、Bがその説明の中で「私に三か月任せて下さい。」という趣旨の発言をしたことで、三か月で必ず利益を上げて損を取り戻せる商品であるように理解したもので、この点からも、Bの説明の不十分ないし不適切であったことがうかがわれる。したがって、Bの説明はなお十分ではなく、説明義務を尽くしたとはいえず、証券会社従業員としての注意義務に反したものといわざるを得ない。

6  以上によれば、本件ワラントは、適合性の原則の点からいっても、原告にその購入を勧誘することが問題であった商品であったというべきところ、少なくとも、被告従業員のBは、原告に本件ワラントの購入を勧誘するに当たり、証券会社の担当従業員として要求される程度の説明義務を尽くさなかったもので、右は証券取引に当たっての証券会社の誠実義務に違反する違法なものであると評価せざるを得ず、被告は、Bの使用者として民法七一五条に基づき不法行為責任を免れない。

三  損害

1  前記争いのない事実及び認定事実によれば、本件ワラントは、原告が購入した後一度も値段が上昇することなく、権利行使期限を経過して無価値となったものであるから、結局、原告は、本件ワラントの購入価格相当額の一一二万四五〇〇円の損害を被ったものということができる。

2  弁護士費用(請求額一〇万円)

後記の過失相殺後の認容額のほか、本件事案の内容、訴訟の経過その他を考慮すると、弁護士費用としては八万円が相当である。

四  過失相殺について

前記認定の事実によれば、原告は、相当の投資経験があり、投資信託による評価損が出ていたとはいえ、相当の資力も有し、自己の自由な意思で投資することが可能な状況にあったと考えられるところ、原告が本件ワラントを購入した理由が、安易に本件ワラントによって利益を得て投資信託の損を回復できると軽信したことにあり、その点についてBに説明義務違反があったことは前示のとおりであるにしても、Bは一応ワラントの仕組みや危険性を説明し、前記説明の小冊子も渡しているのであるから、原告にも、ワラント取引に参加する以上は、ワラントの仕組みや危険性、本件ワラントの内容や問題点等についてより正確な理解をするように努めることが期待され、そのことは必ずしも不可能であったともいえないと考えられる。したがって、本件ワラント取引により原告が損害を被るに至ったことについては、原告の側にも落ち度があることを否定できず、Bの勧誘行為の違法性の程度その他本件に現われた諸般の事情を考慮すると、原告の過失割合を三割と認めるのが相当である。したがって、前記三1の損害から三割を控除すると、弁護士費用を除く損害の額は、七八万七一五〇円となる。

五  よって、原告の請求は、主文第一項掲記の限度で理由があり、その余は失当である。なお、附帯請求起算日は、本件ワラントが確定的に無価値となった、権利行使期限を経過した日である平成五年一二月八日であると解するのが相当である。

(裁判官 小松一雄)

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